簿記検定は悲しいことに資格を取得した報告をしたり、勉強している、と話題になった際に“意味ない”と評価されることがあるようです。
この10年で簿記の試験の難易度はかなり上がっており、10年以上前に受験した方が再受験をしてみると難易度の変化に驚いたという声もあがっているほどです。
コロナ禍以降、ネット試験がはじまり、合格率はかなり高い状況も見受けられますが、勉強範囲も10年前と比べると格段に広がっています。
10年以上前に取得された方からすると簡単な資格だし、とってもその先の人生に特に使うこともなかったから意味ないよ?と思われてしまうのも無理はないかも知れませんが決してそのようなことはない資格です。今勉強中!これから勉強をしようと考えている!という方に向けて今の簿記事情を書いていきたいと思います。
目次
簿記何級を目指したらよいの?
経理職に就きたい、と思ったらまずは簿記の勉強をお勧めしています。ただ、簿記をとっただけで本当に経理職につけるか…という点では以下のポイントを押さえてみてください。
・できれば(いずれ)経理に配属されたいな…程度であれば簿記3級
・就職活動で経理職に就くためにPRするには簿記2級
・税理士、公認会計士系の事務所や監査法人系に就くためにPRするには簿記1級
以降、少しずつ各級の情報に触れていきたいと思います。
日商簿記の受験者、合格者、合格率は?
直近3回の統一試験、直近(2022.4-2023.6)のネット試験に関する受験者、合格者、合格率をみていきましょう。ネット試験は始まったばかりですが、合格率が高い状況です。これからまた合格率に変化があるのか気になるところです。
簿記3級統一試験 受験者:90,735名 合格者:30,409名 合格率:約33%
簿記3級ネット試験 受験者:255,326名 合格者:105,653名 合格率:約41%
簿記2級統一試験 受験者:36,057名 合格者:8,028名 合格率:約22%
簿記2級ネット試験 受験者:127,727名 合格者:47,937名 合格率:約37%
簿記1級統一試験 受験者:28,041名 合格者:3,093名 合格率:約11%
※ネット試験はありません
日商簿記3級をとっても意味ない?
簿記3級を取得するメリットはしっかりあります。
ただ、先ほど、出来れば(いずれば)経理に配属されたいな…程度であれば簿記3級を取得。と触れましたが、就職するためには少し弱いので簿記2級取得を推奨します(理由は次の章で触れます)
簿記3級は就職だけでなく、大学の推薦に有利といったメリットもあります。最近では高校の授業などでも簿記が取り入れられたりと資格取得の第一歩として簿記を推奨していることもありますので少し興味がある、という方には是非受けて頂きたい資格です。
日商簿記2級をとっても意味ない?
簿記2級の取得も、もちろん意味(メリット)はあります。
先ほど簿記3級で少し触れましたが、簿記3級だけでは就職活動においては少々PRに欠けます。それは、これまで触れてきたように簿記3級の取得者が年々増加しているので本気で経理に就きたい!という意気込みをPRするために簿記2級が必要となってきます。
意味ないという言葉から想定できるものとして、せっかく勉強したのに実務に活かしきれない=取得しても意味がない、ということかと思います。
実務に活かしきれていないという点では、簿記2級からの範囲である”工業簿記”が実務ではほとんど使用されないという事を指しているものかと思います。
工業簿記は学習範囲の50%を占めているので学習内容の半分が実務で使われないとなると意味がない、と言われてしまっても仕方がないかとは思いますがその使用されないものの知識がある、という点についても簿記3級の知識レベルではない、というPR事項になるのではないかと考えます。
日商簿記1級をとっても意味ない?
さいごに簿記1級はどうでしょうか。
先ほどまで触れていた簿記2級で就職活動でのPRは十分となります。
ただ、事業会社ではなく、税理士法人・会計事務所・監査法人等に就職を希望されているのであれば簿記1級と簿記2級ではかなり差がついてきます。
残念ながら簿記1級で評価が高まるか、という点ではさほど高い評価にはなりません。
理由として、税理士法人・会計事務所・監査法人等には税理士・公認会計士の方や科目合格者が所属しており、難易度的に簿記1級→税理士→公認会計士と言われていることから簿記1級が若干薄まる現象となります。ただ、ここで簿記2級では書類選考段階でNGとなることが多く、簿記1級が応募資格になることもありますので決して意味がないという事でもありません。
自分が簿記何級をとればよいか
ここまで読み進めて頂くといったい自分はどうすればよいの?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが
・できれば(いずれ)経理に配属されたいな…程度であれば簿記3級
・就職活動で経理職に就くためにPRするには簿記2級
・税理士、公認会計士系の事務所や監査法人系に就くためにPRするには簿記1級
この考え方を基準に勉強する級を決めて頂くとよいかと思います。
各級の勉強時間は
簿記3級:【簿記3級】5分でまるっと分かる!簿記3級取得のための勉強時間を徹底解説
簿記2級:【簿記2級】難しいと思ってない??簿記2級に受かる秘訣!勉強時間や勉強方法の要点がわかる
簿記1級:【簿記1級】合格するための勉強時間500時間?最短を目指す効率よい勉強方法とは?
是非このあたりの記事を参考にしてみてください。
簿記1級はネット試験もなく、2・3か月で取得できる方は少数なので受験前にしっかり検討されることをお勧めします。
勉強するときのモチベーション維持について
簿記を知らない人から簿記をとっても意味ないと言われたり
簿記を知っている人からその級は意味がない、と言われたり
勉強期間が長期化してしまうといつまで勉強しているの。意味あるの?と言われたり
勉強をしていると耳にしたくない言葉が入ってくることもあります。
時には傷つき勉強を中断してしまいそうになることもあると思いますが自分でせっかく決めた目標です。周りの声は気にせず、是非継続してほしいと思います。
私が勉強していた時に支えとなったのは(時には焦りもありましたが‥)Ⅹ(旧Twitter)で繋がっている勉強仲間のTweetでした。みんな頑張っている、みんなもがいている。近くにいなくても自分ひとりではないという安心感はとてもありがたい存在でした。
会ったこともない人たちばかりですが、それでも繋がって頑張る仲間がいるということの大きさを初めて知りました。発信しなくても仲間の様子をみるだけで得られることも多いのではないかと思います。是非、活用してみてください。
意味のないことはなかった
簿記3級、簿記2級は連続して取得しましたがそこからブランク+勉強長期戦で簿記1級までは数年かかりました。(数年ではなくもう少しで10年…といった感じでした)
向いていないのではないか?一生受からないのではないか?と思ったことももちろんあります。
ただ、どんな過程も無駄なことはないと簿記の先生から言っていただいたこともありなんとか勉強を終了することが出来ました。
その時に紹介いただいたものがこちらです。
“なにがしあわせかわからないです。ほんとうにどんなつらいことでもそれがただしいみちを進む中でのできごとなら、峠の上りも下りもみんなほんとうの幸福に近づく、ひと足ずつですから”
宮沢賢治さん「銀河鉄道の夜」からの紹介でした。
勉強も就職活動も道に迷うこともあると思います。
そんなときに是非思い出していただけたらうれしいです。