事務職の求人を探していると比較的給与が高く“経理”“簿記”という言葉を見たことがある方は多いのではないでしょうか。とはいえ、今までの人生で経理や簿記に触れる機会はあまり多くなかったかと思います。経理・会計経験で募集をだすと“会計”をレジでの会計を指す方がいらっしゃいますが、事務職の簿記・経理・会計の会計はちょっと違います。
どう違うのか?は簿記を理解することが一番の近道になりますので、経理初心者で必要なスキル等について今回は触れていきたいと思います。
経理初心者は何から勉強すべき?
簿記を勉強してきて経理につきたい!という方もいれば、経理を希望していなかったけどいきなり経理に配属された!どうしていいか判らない…という方もいらっしゃると思います。今回は後者パターンの方向けに経理に配属されて最初に勉強すべきこと触れていきたいと思います。
まずは何といっても簿記です。そして簿記の簡単な仕訳や勘定科目の理解が出来たらExcelスキルが必要となります。各部署から大量のデータを共有される経理ですが、実は必要なデータはほんの一握り、ということも少なくありません。そのため、実務で大量のデータの中から欲しいデータを抽出するのに1日かかってしまった…とならない為にも、Excelのスキルを身につけておくとよいです。
まずは簿記を身に着ける
簿記といっても日本商工会議所と各地商の工会議所が主催する日商簿記検定、全国経理教育協会が主催する全経簿記、全国商業高等学校協会が主催する全商簿記があります。そして各資格試験の中に簿記3級・簿記2級・簿記1級・簿記上級など、様々な級があり、何から勉強したらよいか?!と迷われてしまうこともあると思います。
社会人で経理に配属されたのであれば“日商簿記検定”の3級・2級を取得されることをお勧めします。2級からでもいける!という方も多くいらっしゃると思いますが、3級では基礎固めが出来るので3級→2級の勉強をお勧めします(3級は未受験でもよいとは思います)
また、2級については商業簿記・工業簿記と2つの分野を学ぶのですが、すでに経理に配属されたのであればその会社で使う分野を習得することをお勧めします(自社工場をもっていて、工業簿記の範囲である原価計算を利用するなど、実務で簿記が活かせる機会は大変少なく、ほとんどの方が実務で使用経験がありません。)
経理に就くためには資格取得が必須ですが、配属されたタイミングで一番大切なことは今必要とされているスキルを身に着けることです。自社で何が第一に求められているか、同僚・先輩・顧問の税理士の先生などに最初に聞くことが一番の近道かと思います。
経理の基礎
簿記を学んで何が身に着くのかということですが、簿記とは、お金のものの出入りを記録するための方法であり、出入りのことを取引と言います。その取引を5つの、資産・負債・純資産・費用・収益というグループに分けます。分けるために使用する言葉が勘定科目といい、その処理を仕訳と呼びます。
例えば、【りんごを1個、300円で仕入れた(支払いは現金で行った)】
この時の仕訳は【仕入300/現金300】となります。
最近ではAIがある程度のことは覚えているシステムもあるので経理に所属しているものの実はあまり仕訳について理解していなかった!という方もいらっしゃいます。
基礎知識となるので身に着けておくと後々役に立つと思います。
会計ソフトの使い方
会計ソフトの使い方ですが、先ほどふれたようにAIが自動処理してくれるソフトが多くなってきています。そのため、一から自分で仕訳を作る、というよりかはAIの判断に誤りはないかを確認することがメイン業務の方も増えてきています。
AIは具体的に何をどう判断していてわれわれ人間は何を確認すればよいの?と思われる方もいると思いますので、一例をご紹介します。
入金:カ)トンガリ 500円があったとします。
AIはカ)トンガリからは毎月売掛金が入ってきている!と認識して予想勘定科目を売掛金と判断、売掛金を勘定科目候補として表示します。
そこで人間は売掛金でOK!であれば登録ボタンを押します。
この時、売掛金でない場合には正しい勘定科目に修正をして登録ボタンを押します。
正しい勘定科目でない場合とは、先方が売掛金を誤って2回払ってしまって本来もらうべきお金ではなかったとき等です。そのため必ず人間の目で確認することが大切です。
表計算(Excelなど)の使い方
経理で簿記と同じくらい必要となるのがExcelスキルです。
経理では紙の請求書などから情報を登録するだけでなく、システムで数値を集計したり、集計した数値を会計システムに取り込んだりと、Excelスキルも求められることが多々あります。
売上などは営業事務など、他部署の方が担当していることもあります。営業事務で使用するデータをすべて経理が使うわけではないので、経理に必要な数値のみをピックアップし毎月スムーズに取り込みが出来るよう経理用の取り込みフォーマットを作っておくことも作業効率を上げるための方法となります。
例えば
営業事務はA~Z商品の各明細情報が必要。経理はA~Zの販売額の合計のみ必要。
といった具合に異なるものが必要となることもあります。その時にA~Zをすばやく合計して数値を表すことが出来れば毎回集計する必要がなくなります。自社のニーズに合わせて必要なものを作ることになりますが一度作ってしまえば改良は少し手を加えるだけで済むのでトータル的には時短作業の実現が出来ることになります。
経理のスキルをアップするため何をする
経理のスキルアップとして簿記が習得でき、実務でもある程度の理解が深まったら一年のスケジュールを整理してみましょう。
経理の一年のスケジュールは大幅に変更となることはありませんが、前年の納付額に応じて税金の納付回数などは変更があります。例えば、消費税の支払い回数は、 年1回、年2回、年4回、年12回の4パターンあります。消費税は年1回!と思い込むことは大変危険ですのでしっかりと一年のスケジュールを確認しておきましょう。
また、各勘定科目の残高確認も大切な仕事です。売掛金の未回収がないか?先方がただ忘れてしまっているだけのケースもあれば意図的に支払いを止められているケースもありますので先手先手で動くことが必要です。逆にこちらからの支払いが漏れているケースがないか?は買掛金や未払金、未払費用の勘定科目の残高を確認して調査します。
毎月しっかりと残高確認をしていれば本決算の時に慌てる必要もありません。
他にも源泉所得税、住民税の納付漏れがないか(不納付加算税や延滞税などが発生します!)の確認も必要となります。金額の集計を経理で行っていない場合でも給与担当者や社労士と連携をとって毎月の確認事項にすることをお勧めします(翌月10日までの期日をまたず月末に余裕をもって行うこともお勧めです)
さいごに
経理に就きたかった方も、就きたくなかった方もいらっしゃるかと思いますが、経理は一生のスキルとなります。そして会社規模に合わせて週2日勤務や在宅勤務なども比較的実現できる職種となります。ライフワークバランスをとりつつもキャリアを積みたい方に大人気の職種です。当社では現在72歳の方が現役経理として週2日、ご勤務されています。法改正など、対応することはそれなりにあるものの、一度経験をすれば大幅に変わるわけではありませんので今のチャンスを身に着けて将来に活かしていただけたらと思います。